インタビュー

2009年4月 6日 (月)

野口あや子ロングインタビュー

堂: こんにちは。

五: こんにちは。

堂: 今日は中央線の雄、荻窪にいます。さっそく、解説をお願いします。五島さん。

五: 中央線沿いっていうのは独特の雰囲気がありますよね。文化人、知識人、その他の変人がうようよしていますからね。そしてここ、荻窪はその総本山。西荻窪の東にあることでも著名な街です。

堂: あ、

  • コーヒーの湯気を狼煙に星びとの西荻窪は荻窪の西

という佐藤弓生さんの短歌がありますね。しかし、今日は春の嵐なのか、外は風が吹き荒れていますね。恐ろしいほどだ。それに比べて、ここデニーズの中は風も吹いていないし、落ち着きますねえ。さすがデニーズです。ねえ五島さん。

五: いやあ、やっぱりデニーズはいいですね。前回の掲示板収録はさびしかったからなあ。むむ、堂園くん、アボガドハンバーグのバランス野菜仕立てに目をつけるとは不遜ですね。それは私の大好物なんですよ?

堂: 五島さんは彩り野菜のカレーを食べているからいいじゃないですか。いやあ、しかし、デニーズは他のファミレスよりも、ご飯がうまいですねえ。

五: 当然です。なにしろデニーズはミシュランの四つ星にランクされていますからね。

堂: いつものように五島さんの華麗なる適当発言が出たところで、そろそろ今回のゲストに登場していただきましょう。今日のゲストは、第一歌集『くびすじの欠片』を出版された……、

五: 野口あや子さんです!! どうぞ!

(ぱちぱちぱちぱち)

野: まあ、野口です。よろしくお願いします。

堂: 「まあ」ってなんですか。ともあれ、今日はよろしくお願いします。

五: 今回の短歌行は、野口あや子さんへのインタビューです。『くびすじの欠片』、読みましたか、堂園くん。

堂: 当然ですよ。近年まれに見るほどの、相聞歌集でしたね。装丁も凝っているし、非常に目に止まります。前々から短歌行では、野口さんの歌を取り上げることが多かったですし、ぜひいつか野口さんにはインタビューしたいと思っていました。実は最近、早稲田短歌会に来てもらったり、若手の会で顔を合わせたりして、なにかとご縁があるんですよ。それに、歌集を出版されましたし、今回来ていただいたというわけです。

五: では、早速インタビューしていきましょう。

堂: まず、人となりから。

五: 子供のころはどんな遊びをしていましたか?

堂: 五島さんはカタツムリを潰していたんですよね。田口さんのインタビューのときに判明した情報によると。

野: ぎょえー。

五: ……。野口さんは?

野: 本とか、読んでましたね。

堂: 本ですか。どんな本を?

野: どんな本だったかなあ? えーと……。

堂: 何か、作者とか、タイトルとか……。

野: うーん、荻原規子の『空色勾玉』とかの「勾玉シリーズ」とか……。あっ! いま思い出しましたけど、子供のころは古代史に興味がありました。

堂: ん!? 古代史?

野: えーと、卑弥呼とかに興味があって、卑弥呼のマンガを完成させたことがあります。

五: え!? マンガを完成? いきなりすごい話題が出ましたね。

堂: いくつぐらいのときですか? 量は?

野: 12歳ぐらいで、ノート一冊ぶんくらいで……

五: ストーリーは?

野: どこから話そう……。ネパールに「クマリ」という生き神の少女神がいるんですが、無表情で血を流したことのない少女が選ばれるそうなんですよ。それで決まった期間ほとんど人権もなく祀られるんです。

堂: ん? ネパール? 古代史は?

野: それで、その祀られるクマリにヒントを得て、卑弥呼もそういう女の子だったんじゃないかと。で、近未来からタイムスリップしてきた男の子が登場するんです。その男の子と関わることで、卑弥呼が人間的な楽しさや喜びに目覚めていく、というマンガです。

五: すごい深みのあるストーリーですね。

堂: それ、本当に小学生のとき?

野: それでその後、男の子は未来に帰ってしまい、悲しんだ卑弥呼のもとに神が降臨して、卑弥呼は真の女王になるんです。

堂: おおー!

五: 大団円!

堂: すごいですねえ。大河ドラマだ。

五: すばらしい! 同じ時期に堂園くんはダンゴムシを戦わせていたというのに。

野: 読者は一人しかいなかったんですけどね。

堂: そっかー。それでもすごい。正直、いま超読みたいですもん、その話。

五: まだ持ってますか?

野: ああ、ありますよ。このあいだ整理していたら出てきました。でも、初回の最後の一ページだけないんですよ。

堂: 気になりますね、そのページ。

五: その後、そういった興味はどこかに消えてしまったんですか?

野: その後、卑弥呼を調べていくうちに、NHKの「堂々日本史」とかの冊子版を図書館で手に入れて、古代とか古典に興味がわきました。

堂: おっ! 古典ですね。どういった人を読んでいたんですか?

野: あまり内容には、触れるつもりがなくて、読んだのは小野小町とか、生き方に伝説がある人でしたね。いかに歪曲されたかとか、面白いと思いまして。

五: 小野小町の次はどういった感じに?

野: そうですねー、あっ、伝説というところでは、徳川埋蔵金にもその後興味がわいて、「世界ふしぎ発見」の徳川埋蔵金特集を妹に見せて、仲間に入れようとしました。

五: (大爆笑)

野: でも妹は本気で信じちゃって、本気で探し当てるつもりになっていましたね。私は信じてませんでしたけど。

堂: 面白いなあー。

五: それで、古典文学方面でのその後は?

野: 文学方面では、女性の作者やその生き方に興味がいって、そういった人たちをよく読んでました。でも、生き方に興味があったのであって、枕草子とかには行きませんでした。フィクションだけど、源氏物語の葵とか。頑固で、人とか自分とか許せないところに共感しましたね。

堂: なるほど。うなずけます。

五: けっこういきなり大事なことに当たった感じがしますね。

堂: 女性の作品に対する気持は、野口さんの中では重要な気がする。現代では、どんな女性作品を?

野: 中学のときは山田詠美を読みましたね。『風葬の教室』『蝶々の纏足』とか。『ぼくは勉強ができない』とかいったエンターテインメントを押し出している感じより、女の子の性(さが)や業が見えるものを読むと安心した覚えがあります。

五: その辺りが小説との出会いって感じなんですね。最近はどんなものが好きですか。

野: 金原ひとみですね。出会ったのは歌を始めてからですが。あと、鈴木いづみとか。個人的には、まっぱだかで書いている感じのほうが、読む側も楽しめる気がしています。

堂: あ! 鈴木いづみ、僕もとても好きです。なんか、かっこよろしいよね。「理屈はあとだ、みんな死ね。」という言葉、いいよね。

野: 逆に金原ひとみは「理屈はあとだ、生きろ」という感じですよね。

堂: あー、分かる分かる。

五: なるほど、人柄が見えてきましたね。そろそろ歌集の話に入りましょうか。

堂: そうですね。まず、歌集全体についてですが、どういったことを気をつけて作ったんですか?

野: ふつうに、自分の好きな歌、自分らしい歌が入ったらいいな、と思っていてできた感じです。

堂: 自分らしい歌というと、どういう感じでしょう?

野: 人間らしい歌? こいつ生きてるなと感じる、というか。

堂: なるほど。

野: らしいというか、そうありたいと思っている、ということですけど。

五: どんなときに「らしい」歌ができますか?

野: やっぱり相聞を主軸にされがちなのですが、まったくその通りで、恋人じゃなくても、人と関わっているときが「生きてる」って感じがして、歌ができやすいですね。でも、なんというか、相聞でもなんとなく「好き」「嫌い」というときにはできなくて、かなり思いつめるし、どうにかしたいと思ってからのほうが歌ができやすいです。

五: そういえば人と関わっている歌がすごく多い感じしますね。

野: たぶん人がいなかったら歌はできないでしょうね。まあ、「いない」というのは「いた」ということでもあるので、矛盾のある言い方ですけど。

五: うん、

  • やや重いピアスして逢う(外される)ずっと遠くで澄んでいく水

は好きな歌でしたが、「(外される)」を入れたっていうことは、やっぱり人との関わりをモチーフとして大事にしたい、という気持を感じますね。

堂: それはすごく感じますね。野口さんの歌は自分一人だけのことを歌っているときでも、他者がいる感じがして、それが良いと思います。

五: そうですね。私、この歌の入っている「寂光院」という連作、好きです。

  • 雪虫のひとつひとつの祈りかな 賽銭箱の多き山寺

で、急にパーッと視界が開ける感じがして、この歌があることでラスト3首に説得力が増すような気がします。

野: そうなんですか! 意外です。歌集の中で「寂光院」のモチーフって浮いてるかなと心配しながらも入れたのですが。

五: そうかなあ。

堂: 浮いている感じはしなかったけどな。確かに、連作として、始まりの

  • 伽藍とて恋をするのだ靴下で踏む床板がきしきしと鳴く

とかは、珍しいモチーフかな、と思ったけど、五島さんも言ってた、連作最後の3首、

  • 眼のまえを雪虫がゆく抱かれてる時の声だけ上手に覚え
  • 触れて欲しい場所に触れてもらうため線香の火を避けて歩めり
  • 虫食いの紅葉が揺れる血が混ざりあう戦いをまだ味わえず

とか、非常に個性が出ています。

五: うん。

  • 虫食いの紅葉が揺れる血が混ざりあう戦いをまだ味わえず

に見られる、戦いのモチーフ、よく見る気がします。

堂: 人間の関係とは戦いである、という認識が常にある気がする。僕も戦いということをよく考えるので、なんかそこは反応してしまうなあ。

野: そう言われると、自分が少し分かったような気がします。

堂: なんていうかなあ、戦い、て言うとちょっと難しいし、語弊があるんだけど、歌の中で、常に対象や相手を舞台に立たせようとしている気がする。安全圏にいる人たちに、お前も関係性の戦場に立て! と言っている。なんか、ぼーっとしてんじゃねーよ、という声が、歌から聞こえる(笑)。

五: (笑)。そのへんが気持いいよね。

堂: フェア精神がひどく強い気がするんですよ、裏取り引きとかで、なあなあに分かり合ったりするのは嫌なんだと思う。例えば、

  • 肘にある湿疹ふいに見せるとき目をそらさない君がいたこと

とか、

  • きっぱりと降りる初霜 わたくしの嫌うひとにも苦しみはある

とかを読んでもそうですよね。こうした、「私もお前もちゃんとしろ」はとてもよい個性だと、僕は思います。

野: なんとなく分かってきました。なんだろうな、歌そのものに関してだけではないんだけど、相手の都合を考えずに、まず何にでも見切り発車でぶつかっているのは自覚していて、上下とか見ずに生で人と関わりたいというのが、性格的にも歌にも出ちゃうんだと思う。それが「ちゃんとしろ」になるというか。良いか悪いかといえば、私としてはわがままな面を感じてよくない気がたまにするんですけどね。

堂: うーん、よく分かんないけど、僕はすごくいいと思うけどね。

五: 私もそう思います。関連するかどうか分かりませんけど、

  • ファンデーションから浮き上がる汗ぬぐいぬぐいて夏の陸橋わたる

とか、自己認識の厳しさを感じます。「ファンデーションから浮き上がる汗」とか書けるところが。

野: うーん、逆に不思議なんですけど、どうしてそういう例えば、ファンデーションに汗がにじむ、みたいな事を歌うのがこうして気に入られるんだろう。女の人ならみんなあることなのに。

五: 「気に入る」というより「ぎょっとする」に近くて、生身の衝迫感みたいなものに息を呑む、という感じですね。「気に入られたい」っていう動機からはこういう歌はまず出てこないはずだから、野口さんの歌への姿勢が垣間見えるような気がしたんです。

堂: それ、すごく分かります。こういうモチーフや体感は女の人によくあるかもしれないけど、他の人はもっと雰囲気で理解しようとしている。それに対して野口さんは「浮き上がる」という視線とか、「ぬぐいぬぐいて」という踏み込み方とか、雰囲気では終らせず、もっと自分の体感に踏み入ろうとしている。それは自分でも、「これ」とはっきり言えないものなんだろうけど、それでもなんとかして言おうという意志をすごく感じる。そういう感じかな。

野: あー、「雰囲気」とか苦手ですね。確かに。

堂: あ、いま思ったけど、これは歌を作る態度とか精神論の話ではなくて、歌から感じられる特徴のことだ、とひと言っといたほうがいいかも。混同しやすいから、そこ。

五: 言いなよ。

堂: 精神論じゃないです。

野: まあ、私は分けて考えきれないのですけど、言いたい、読まれたい、というのが過剰に出るから分けられないのかもしれません。ちゃんと読み手とキャッチボールをしたいというか。それが一首でもできたら、あとは歌集にコーヒーぶっかけられてもいいと思うんでね。

堂: かっこいいなあ(笑)。

野: 歌集をなんで読んでもらいたいかというと、関わりたいから読んでもらいたいんですよ。歌集自体が、「相聞」なんでしょうかね。

五: そうなんだろうね。

堂: でも、本当に相聞歌集だよね。読んでも読んでも相聞で、この人は相聞の鬼だなー、と思った(笑)。

五: 「相聞的な気分」ていうような、生やさしいものじゃないからね。

野: 相手にあこがれみたいなものが、持てないんですよね。もっとこっち来い! みたいな性格であり、相聞歌な気がします。はっきりわたし(あえてカッコなし)に興味を持ってほしくてやっているんだろうなあ、と少し自覚しています。

堂: うん、それが分かって、面白かった。僕が好きだったのはこれですね。

  • 下の名で呼べばさんさん水しぶきあなたの娘を売り飛ばしたい

これ、すごく印象に残った。特に下句がすごい。「売り飛ばしたい」って(笑)。この迫力が突き抜けていて、ある種、爽やかな気持になりました。

五: その歌、すごいよね。

野: (苦笑)

堂: あと、

  • 母の書くメモを幾度も折りたたみ白線の内側で夢を待つ

も印象に残った。これも下句がいいです。「夢」って短歌で頻繁に使われる、わりと安易な言葉だけど、この歌ではそれが生きていると思う。

野: え、それは自分ではちょっと没個性かなあ、と思ったんですけど。母の歌だったら、

  • 真夜中の鎖骨をつたうぬるい水あのひとを言う母なまぐさい

の方が特徴が出てないですか?

堂: うーん、僕としてはそちらの歌の方が個性がない気がしますけど。個性がない、は言いすぎだな。いい歌だし、他の人にはたぶん歌えないけど、その歌の場合、面白さがずいぶん散文的な気がする。つまり、なんとなく言葉で説明できるかなって思う。この歌は、自分の恋人のことを話す母に性的な様子を感じて、その微妙な感受が嫌悪につながる、という感じですよね。それを「なまぐさい」で表現している。なんというか、ある種分析できる。

野: ふむ。

堂: でも、それに対して、「あなたの娘を売り飛ばしたい」とか「白線の内側で夢を待つ」とかは、うまく分析できなくて、作者としてもよく分からないまま言葉が発せられている気がする。この分析不可能な感じとか、定型のリズムと感情が結びついている感じ、よい意味でリズムに言葉を言わされている感じ、とかこそが定型詩の良さだと思うので。

五: 最終的によく分からないところに行かないとね。

堂: まあ、この話は、僕はそうだ、に過ぎないし、「分析できないのはお前がその歌をうまく読めていないだけだ」、と言われてしまうと、だまっちゃうんですけど。

五: どうですか?

野: なんだかすごく面白い気分になってます。

堂: そうですか、それはよかった。

五: そうだ、では、そろそろ野口さんの好きな歌人の話をしましょうか。どんな歌人が好きですか?

野: 最初に言ったように女性作家に興味が強いんですけど、亡くなった方ですが永井陽子さんですね。泣きますね。

堂: ああー、僕も好きです。

五: 例えばどんな歌が好きですか?

野: そうですね。

  • 身をやつしこころをやつしうつそみのひとを愛すと笛天に吹く

ですね。

堂: なるほど。

野: あと、耳の鼓動の歌、

  • 逝く父をとほくおもへる耳底にさくらながれてながれてやまぬ

とか好きですね。私も酔うと耳のへんが「トクトクトク」と言うんですけど、その時のぼんやりと覚醒が混ざっているような感じが永井さんの歌にはします。しかも、目覚めたのではなく、誰かに目覚めさせられたような頼りなさが、うっとりしますね。

五: ふむ。

堂: あー、それ面白いね。

五: 永井陽子さんを好きなことが伝わりますね。

堂: うん。じゃあそろそろ好きなアーティストの話を聞きましょうか。誰が好きですか?

野: えーと、うーんと、

五: じゃあ、例によって、表で。ドン!

Nogutiartists

堂: おおー。

五: なるほどー。

野: (ぐったり)

五: たくさん答えさせられて、疲れていますね(笑)。

堂: やっぱり特徴が出てますね。

五: 注目はやはり椎名林檎、Chara、Cocco、UAあたりの◎◎ですとか、ミスチル××ですかね。アムロも◎なんですね。

野: 一人で戦っている女の人が好きですね。ミスチルは周りが好きだから反発してます。あと、雰囲気感でかわいいという女の子を避ける傾向にあります。

堂: そうなんだ(笑)。でも、僕もミスチルだめだなあ。なんか。

五: 私は好きだけど。まあ、といったところで締めますか。

堂: そうですね。『くびすじの欠片』は本当にいい歌集ですから、ぜひ、これを読まれている皆さんにも買って読んでいただきたいです。注文は短歌研究社(http://www.mmjp.or.jp/TANKAKENKYU/trial.html#kasyuu)に連絡すればいいんですよね。

野: はい。

五: ぜひ読んでいただきたいです。いやー、今回も疲れたね。スカッとすることがしたいな。野口さんもお疲れさまです。今日はどうでした?

野: いやいや、楽しかったです。勝手に楽しんだ感がありますが。

堂: 僕も面白かったです。

五: 今日はほんとうにありがとうございました。

野: いやいやこちらこそ。

堂: こちらの直球や変化球の質問に、がっちり答えてくれたのが、頼もしかったですよ。

五: 直球や変化球!?

堂: ん? どうしたんですか、五島さん。

五: そうだ野球だ!

堂: え?

野: 急にテンションが上りましたね。

五: ここ、荻窪にはバッティングセンターがあるんですよ!! スッキリするには、やはり野球です。野口さん、ちょっと勝負しましょう。

野: ……。

堂: やれやれ、五島さんは野球に目がないですねえ。野口さん、ひと勝負してあげてください。めんどくさいかもしれないけど、お願いします。

野: しょうがないなあ。

五: やった! 野球だ! じゃあ行きましょう!

堂: はいはい、お疲れ様です。

野: お疲れ様です。

五: お疲れです。

2008年9月25日 (木)

田口綾子ロングインタビュー

堂: こんにちは。

五: こんにちは。

堂: 今日は横浜のジョナサンからお送りします。短歌行です。

五: 横浜といえば、横浜ベイスターズですね。ファン層にはあの保坂和志が含まれているとかいないとか。横浜市民の約5%がベイスターズファンですね。

堂: 本当に5%なんですか?

田: 消費税じゃないですか!

堂: そうですよねえ。あいかわらず適当ですねえ。いいかげん横浜市民に怒られますよ。僕としては横浜は川沿いに並ぶ屋台を推したいです。今日は台風一過でよい秋の日ですね。今回もお便りが来ました。神奈川県在住の大学生Hさんからのお便りです。質問の部分だけ抜粋します。「五島さんは出勤前に石が木に当たらなかったらどうするんですか?」どうするんでしょうねえ。五島さん、どうするんですか?

五: 当たるんです。

堂: そうですか。Hさん、当たるそうです。

五: 当たるんです。

堂: では、そろそろ今回の短歌行、始めましょうか。今回のテーマは、第51回短歌研究新人賞受賞者、田口綾子に聴く!」です。

五: それでは登場して頂きましょう。田口綾子さんです。どうぞ!!

(クラッカーの弾ける音)

田: 初めまして。田口綾子です。

五: ぱちぱちぱちぱち。

堂: ぱちぱちぱちぱち。

五: こんにちは、田口さん。お久し振りです。

堂: 今日はわざわざ横浜までお越しいただきありがとうございます。このたびは受賞おめでとうございます。

田: ありがとうございます。お二人とは早稲田短歌会やガルマン歌会で仲良くさせてもらっています。

五: 我々二人は田口さんのことをわりとよく知っているのですが、多くの方にとって田口綾子さんはまだどういう方か分からないと思います。そこで、今回は色々とインタビューをしていきたいと思います。

堂: はい、そんな感じです。ではそろそろいいでしょうか。

田: はい、よろしくお願いします。どうぞお手柔らかに……。

五: では、まずプロフィール的なところからお伺いします。

田: 高校までは茨城県水戸市に住んでいました。大学進学にあたって上京しました。

五: 水戸はどんなところですか?

田: 程よく都会、程よく田舎という感じですね。水戸駅南口を出たところのペテストリアン・デッキからは、とても広い空が見えてたいへん気持ちが良いです。最近、「納豆の像」ができたとかいう噂を聞きました。実家は、駅からバスで20分ほど行ったところです。

堂: 小さなころは何をして遊んでたんですか?

田: 近くの児童公園でよく遊びましたね。「たかおに」とか「靴とばし」とか、一輪車も好きでした。

堂: なるほど。一輪車って田口さんぽいなあ。

五: 「たかおに」もそんな感じします。

田: そうですか?

五: そうですよ。私はカタツムリの殻を剥く遊びとかしてましたね。コンクリートのブロックで卵を割るみたいにして。田口さんはどうですか?

田: い、いやあ、そういうことはしませんでしたねえ……。ちょうちょとか、トンボとか、バッタを捕まえるくらいのことはしましたけど。

堂: 僕はダンゴムシを捕まえて友達と対決させてました。でも、ダンゴムシはすぐ丸まってしまって、なかなか対決してくれないんですよ。まあ、女の子はあんまり虫では遊びませんよね。

五: 小学校に上ってからはどんな感じでしたか?

田: とにかく「しっかりした子」と言われ続けてきました。学級委員をやったり、宿泊学習の実行委員長を2年連続でやったり、生徒会のような委員会にもいました。休み時間は、男の子に混ざってドッジボールばかりしていました。

五: 優等生系お転婆タイプですね。委員会では何をしていたんですか?

田: 「児童会だより」っていう会報を作ったりとか、募金活動をしたりとか、全校児童での集会を企画したりとか。「夏を呼ぶ集会」っていう大きいイベントでは、縦割り班ごとにペットボトルロケットを飛ばして飛距離を競ったり、水鉄砲でびしょぬれになるまで遊んだりしました。

堂: 「夏を呼ぶ集会」って名前がいいですね。

五: すばらしい集会だ。

堂: じゃあ田口さんはリーダー的存在だったんですね。

田: そうかもしれませんね。

五: 中高ではどうだったんですか。

田: 中学校では文化祭の実行委員とか、学級委員とか、生徒会役員とか……。あ、1年、2年の時は合唱コンクールの課題曲の伴奏もしましたね。ピアノをやっていたので。

堂: 中学でも相変わらずのリーダーっぷりですね。僕はずっと隅っこにいるようにしてましたから、ずいぶん遠い存在だなあ。

田: 高校は、三年間学苑祭実行委員会を中心に生活しました。寝ても覚めても学苑祭。クラスの方でも、HR代表、HR委員、クラスマッチ委員なんかをやってましたけどね。あと、中高通して剣道部でした。2段もってます。

堂: 田口さんは剣道のイメージありますね。姿勢もぴっとしているし。実は僕もやっていたんですよ。

五: 堂園くんには剣道のイメージ全然ないね。

堂: そうだね。すごく猫背だしね。学苑祭には思いいれがあるみたいですね。

田: そうですね。もう命懸けでやってました。直接生徒と接することが多い係だったので、辛いことも多かったですよ。昼休みに上級生のクラスと衝突してしまった時は、次の化学の授業を10分くらいで抜けて、保健室でずーっと泣いてました(笑)。顧問の先生方とも、毎年ずいぶん揉めてましたし。けど、ひとつひとつの仕事が本当に本当に楽しくて。あのエネルギーは、一体どこから湧いてきてたんでしょう……。委員会のメンバーともすごく仲が良くて、朝も昼休みも放課後も委員会室でバカ騒ぎしてました。今でも仲の良さは変わらなくて、お正月やお盆にはよく集まってます。あ、委員会には「学苑祭館(やかた)」っていう大きい看板が掛かっていて、「館(やかた)」が委員会室を指す語としてありました。

五: すごく生き生きした学校生活ですね。

堂: そうですね。人柄が伝わります。ではそろそろ短歌の話題に移っていきましょう。まずベタに短歌との出会いを聞きたいと思います。どんな感じでした?

田: 高校受験用の参考書で、俵万智さんの歌を目にしたのがきっかけです。中学3年生の秋でしたね。で、ちょうどそれが誕生日間近だったんです。なので、友人から「プレゼント何が良い?」と訊かれる度に、「俵万智さんの歌集が欲しい!」と言って回りました。

堂: ほう。で、貰えたんですか?

田: ええ、たくさん貰いました。河出文庫の『サラダ記念日』、『かぜのてのひら』、『チョコレート革命』に始まり、『花束のように抱かれてみたく』とかも。エッセイ集では、『ある日、カルカッタ』とか『言葉の虫めがね』とか。それぞれ、ものすごく読み込みました。

五: そんなにいっぱい!

堂: いい友達ですね。

五: 俵万智のどこらへんに魅かれたですか?

田: そうですね、やっぱり「普段使いの言葉で短歌を作っている」ってところでしょうか。このことで、短歌というものがぐっと身近に感じられましたし。あとは、恋愛の歌が多いところも好きでした(笑)。

堂: どの歌が好きですか?

田: そうですねー……。「ひかれあうことと結ばれあうことは違うふたりに降る天気あめ」とか、「缶ビールなんかじゃ酔えない夜のなか一人は寂しい二人は苦しい」とか、「何もかも<ごっこ>で終ってゆく恋のさよならごっこのほんとの部分とか、今ぱっと浮かんだのはこのへんですね。

五: なるほど。しかし、中3は早いですね。俵万智の後はどんな短歌を読んでいたんですか?

田: 高校2年くらいの時に、たまたま本屋で『かんたん短歌の作り方』を見つけて。そこから、枡野浩一さんとか、加藤千恵さんや佐藤真由美さんの歌集を買って読んでいましたね。あとは、アンソロジー(『現代短歌の鑑賞101』)を高2の冬に買ったのをはっきり覚えています。折に触れて、気になった歌人のページを読んでいました。

堂: なるほど。『かんたん短歌の作り方』の「自分の顔に似合わない短歌は、つくらないようにしましょう。」は名言ですよね。

五: でもその後アンソロジーを手に取ったのはやはり注目するところだと思います。だって、枡野さんの本は目に付くところに置いてありますけど、アンソロジーはそんなには置いていないですから。

堂: アンソロジーはどうやって知ったんですか?

田: たまたまですよ。地元のちょっと大きめの本屋の、詩歌・俳句のコーナーを見ていて、「あ、これは面白そうだな」と。俵万智さん以外の人の歌を読んでみたいという気持ちが働きましたね。

堂: で、そのころ短歌は作っていたんですか?

田: ええ、高1の冬くらいから少しずつ作ってはいました。完全に自己流で、しかも気が向いたときにちょこちょこと、という感じでしたけどね。高校に文芸部はありませんでしたし。

五: へえ、早いですね。

田: で、高2・高3になってからは、高校生のコンクールに出したりもしてました。いちばん大きい賞は、高3の時の「全国高等学校文芸コンクール」の優秀賞だったと思います。

堂: すごい。どんな歌だったんですか?

田: 「日常のかけらはあなたが持ち去ってジグソーパズルは終わらないまま」という歌です。

五: うまっ。

堂: うまっ。

田: 今思うとだいぶ恥ずかしいですけどね。

堂: で、その後大学に入り、早稲田短歌会に。

田: はい。

五: 早稲田短歌会に入ってどうでした?

田: 非常に刺激的でした。「短歌の話ができる」というだけでもうものすごく幸せでしたね。当時は歌会、勉強会ともに週1回ずつやっていたので、どんどん色々な歌や批評に触れることができましたし。

堂: ああー、そのころ僕は幹事長でしたね。懐かしいなあ。

田: あの年の新入生が私だけだったこともあって、先輩方にもとても良くしていただきましたし。

堂: その節はどうも。

田: いやほんとに。

五: なるほど。これでけっこう田口さんの短歌的自己形成が分かりましたね。じゃあ、次は現在の話をしますか。まず受賞作について触れましょう。

堂: そうですね。田口さん自身は受賞作「冬の火」ではどこらへんを目指して作ったんですか?

田: そうですねー……。「あのひと」に向ける悲しみの、透明感のようなものを表現したかったんです。

五: なるほど。なんか聞いたところによると、元々あの連作はかなり違ったそうですね。

田: ええ。元々の「冬の火」は、ある人の死を悼むというテーマがあったんです。ですが、早稲田短歌会内で批評会を行ったときに、「『死』もモチーフの1つのようになってしまっている」、「技巧的過ぎる」、「悲しさが伝わってこない」、というように指摘をもらって……。これはまずいな、と思って「挽歌」的なものを除いて、「あのひと」が出てくる歌を加えて、相聞の一連にしたのです

五: 挽歌から相聞ですか。面白いですね。たしかに相手のことを思うという共通する部分がありますが、この変化はけっこう興味深い。

堂: たぶん、基本的なベクトルというかポテンシャルというか、そういうものが相聞的なものに向いてるんでしょうね。

田: たぶんそうだと思います。

五: 普段、どんな時に歌ができますか?

田: 食器を洗っている時とか、お風呂に入っている時とか、雨の日に傘を注して歩いている時とか、水の近くにいると不思議と「短歌モード」になります。下句だけできるとか、五・七だけできるとか、そんな感じですけど。

五: 変わってますね。字にするのはいつするんですか?

田: 忘れないうちに、携帯電話に打ち込んでいきます。短歌未満のフレーズが、どんどん携帯に溜まっていくんですが。

堂: 「冬の火」の連作はどうやってまとめたんでしょうか?

田: 早稲田短歌会の歌会や、ガルマン歌会に出した歌が中心になっています。歌会の〆切直前に携帯を見直して、その時歌にできそうなフレーズを探し出して、何とか形にするという作り方がほとんどですね。歌を作るぞーとパソコンに向かって作業をするのは、本当に連作をまとめる一時期だけです。新しく作ったり、手直ししたり、並べ替えたりっていう。

堂: 音楽用語がたくさん出てくるのはどうしてですか?

田: さっきも少しだけ言いましたが、4歳から高2の冬まで、ピアノとエレクトーンを習っていたんです。学校の音楽の授業もすごく好きでしたね。リコーダーとか。だから、「音楽用語」っていうか、わりと普通に自分の語彙としてあります。

堂: なるほど。あとやはり僕はこうした歌がどうしてできるのかが、興味ありますね。ルーツというか。

五: そうですね。

堂: 好きな小説とかあります?よく読んでた本とか。

五: じゃあ、まず幼少期から。

田: 『とっぺんのとけい』という絵本は、祖父に1日何度も読んでくれとせがんでいました。全文暗唱できるくらい読まされたらしいです、うちのおじいちゃん(笑)。自分で文字が読めるようになってからは、昔話とかグリム童話にはじまり、色々読みましたねー。特に好きだったのは、「クレヨン王国」シリーズとか、「かぎばあさん」シリーズ、「ふーことユーレイ」シリーズあたりかなあ。

堂: ほう。

田: 子供向けのギリシャ神話なんかも好きでしたし、シートン動物記、ファーブル昆虫記とかも読みました。軽めのものでは、折原みとをすごくたくさんよみました。ティーンズ小説に分類されるやつですね。あ、あと、図鑑をかなり読んでました。小さい頃は。恐竜とか。植物とか。

五: ああ、私も図鑑好きでしたねえ。貝と鳥と茸。青春期はどうですか?

田: 青春期……(笑)。いや、実は情けないくらい中・高は本を読んでいなくて。あ、恩田陸は当時から今も相変わらず好きですね。出身高校が同じということもあって、何となく学校の描写には感じるものがあります。

堂: 現在ではどんな作家が?

田: あまり読んでいないんですけど……。ただ、大学に入ってから近代文学は結構読みました。谷崎とか、川端とか好きですね。

堂: 谷崎とか川端ですか。谷崎と川端でだいぶ違うと思いますけど、どういうところが好きですか?

田: 谷崎はあの全体的にねっとりした雰囲気が好きです。文章が呼吸してる感じがするんですよね。『春琴抄』とか、随筆ですけど『陰翳礼讃』も好きです。川端は『古都』、『千羽鶴』、『波千鳥』あたりが好きなんですが、何でだろう……、人物にきちん血が通っている感じが良いんですかね。

堂: じゃあ、絵とかはどうですか?

田: 美術は大好きです。学芸員資格も取ってますし。多い時は、週1回ペースで展覧会に行ってます。日本美術が特に好きで。下村観山、菱田春草とかに特に惹かれます。山口華揚とか、橋本明治、奥田元宋、速水御舟、川端龍子、池田遙邨とかも良いですね。

五: へー。近代日本画だ。小説と合わせて考えると、けっこう“日本的”なものが好きなんですね。卒論も源氏物語だそうですし。

田: 西洋のものだと、版画が好きです。リトグラフ。画家単位で挙げると、マグリット、カンディンスキー、ミロ、パウル・クレーとかが好きです。

堂: 聞いてると、プリミティブなものよりも、端整で整ったものが好きみたいですね。それは歌柄とも通じてますね。

五: 確かに。クレーなんかも感情や気に入った風景をストレートに表現する、といった意味でのプリミティブさはないですね。かなりレトリカルです。私はこの好みを聞いてすごくうなずきました。なんていうかなあ。田口さんの歌の技法の表れ方にこの好みと共通するものを感じるんですよね。

堂: 分かりますね。技法。

五: 例えば「フェルマータのような祈りは届かずにある花園を燃やしてしまう」を挙げて言えば、ベースにある情念をそのままストレートに詠うというよりも、「フェルマータのような」「花園を燃やしてしまう」のような技法を使うことによって、一段階抽象的な形で表現していますよね。しかしそれは直喩、暗喩という技法を使っているということが分かりやすい形で出てきていますね。そのあたりが速水御舟などの近代日本画とつながるような気がします。これは平山郁夫とか東山魁夷までいくと、もう一段階抽象の度合いが増すような気がします。普通のこしあんとナノレベルまで滑らかになったこしあんという感じでしょうか。漠然とした言い方ですけれども。

堂: ベースにある情念が小豆だとして、御舟の方が東山魁夷よりも小豆つぶが残っているんですね、別の言い方をすると、御舟の方が、東山魁夷よりも型がはっきり見える。御舟の方が型と内面という対置ができる気がする。それに対して東山魁夷や平山郁夫は型と内面が結びつきすぎてしまって、型自体は目立たないという違いがあると思います。田口さんの場合も型や技法を使っているというところが目立っています。

五: 馬場あき子さんも選評で「歌い方に一つの方式がある」と言っていますね。

堂: この技法の目立ち方が「うまい」という評につながったのかもしれませんね。

五: 肉化した技法に対しては、「うまい」という評は出ないですしね。例えば山崎方代とか、釈迢空とか。

堂: そうですね。まあ、画家の分析を含めてずいぶん荒っぽい二分法をしましたが。

田: おわあ、なんかすごく分析されている……。しかし何となく分かります。「型」と「内面」の関係については。けど、「型」すなわち「技法」そのものが目立ってしまうのって良くないことなのではないですか? 材料が分かるというか。

堂: 良い悪いとかではないと思います。

五: 方法の違いでしょうね。田口さん自身は技法が技法として表れることに羞恥心のようなものはありますか?

田: 羞恥心というか……、危機感かなあ。本当に優れた技法ってその存在を感じさせないくらい歌の中に溶け込んでしまうものではないのですか? まあ、私は魁夷や郁夫より御舟の方が好きですけど……。短歌も、「技巧的な」歌は好きですし。

五: 「みずいろのらせん階段を降りてくるあなたは冬を燃やす火になる」の歌にも火のモチーフが出てきますね。それから音楽用語にしても、感情を美しく表象しようとする意志を田口さんの技法には感じます。

堂: そこには田口さんのこだわりを感じますね。あと、良いと思うところは、「ベランダのはるか遠くで日は暮れて追伸に書くかささぎのこと」の「かささぎのこと」とか、「少しずつ好きで少しずつ嫌いヤツデの枝の遠い輪生」の「ヤツデの枝の遠い輪生」とか、渋い言葉がけっこう効いていて、一連を読んでいると、奇抜な単語を出さずに印象を深めている。言葉に無理をさせていないというか。そんなところが良いと思いました。

五: 「かささぎ」の歌は私も好きです。荻原裕幸さんもほめてましたね。あと他に田口さん自身でこの連作にこだわった部分はありますか?

田: うーん……。ものすごく自意識が強い歌ばかりが並んだ一連だとは思うのですが、その自意識の強さが、読み手の負担にならないようにという気持ちは強かったです。もしかしたら、それが技法の目立ち具合につながったのかもしれません。

堂: なるほど。ではこの辺で受賞作については締めますか。あと僕が聞きたいのは音楽の話ですね。田口さんはどんなアーティストが好きですか?

田: J-POPを意識的に聴くようになったのは、ごく最近なんですけど。そうですね。一青窈やJUDY AND MARYは特に好きです。

堂: なんで一青窈が好きなの?

田: メロディーが好きなんです。特に、武部聡志さんが作曲している曲の。歌詞も、何か独特ですしね。ぎりぎりのところで破綻していない感じで。

堂: じゃあ、JUDY AND MARYは?

田: 元気いっぱいでかわいい感じが良いと思います。歌われている感情って、わりと湿っぽくて暗くて「オンナノコ」っぽいように感じるんですけど、あのメロディーと声に乗せられると、そういったものの持つマイナスのエネルギーが軽減されていくような気がして。

五: 確かにそうですね。軽減を通り越して、マイナスエネルギーがプラスエネルギーに反転している域ですよね。私もJUDY AND MARY好きです。

堂: 僕も好きです。では、次に嫌いなアーティストは誰でしょう。

田: モーニング娘。とか、ハロプロ系はちょっと……。

堂: どうしてですか?

田: 何か、音楽以外の要素の方が目立っていて、それがちやほやされていて、本人たちもそれを良しとしているように見えてしまうから、とでも言いましょうか。

堂: えー、アイドルなんだし、それはいいんじゃないの?

田: アイドルのアイテムの1つとしての音楽、っていう位置付けが見え見えなのが、何かこう……。

堂: 結局、アイドルが嫌いなんですね。

田: そういう括りで嫌いというわけではないと思うんですが……。うーん。

五: 嫌いなアーティストの話は面白いね。たくさん聴きたいな。よし! 日本のアーティストの好き嫌いをまとめて聴きますから、表で答えてください。四段階評価で。聴いたことないやつは「?」で。

田: 分かりました。

五: はい、ドン!

Photo_5 

堂: ほおー。

五: なるほどー。

田: 難しいですね、答えるの。

堂: でも、また人柄が出て面白かったです。僕は、やっぱりアイドルっぽいのが嫌いなんだなー、と思いました。

五: 面白いですね。ちなみに、表の並び順は思いついた順ですので意味はありません。

堂: リストに偏りがあるのも、ご了承ください。

五: さて、聞くのはこんなところですかね。

堂: そうですねえ。あっ! そういえば肝心の好きな歌人を聞いていなかった!

五: 本当だ!

田: 本当だ!

堂: で、田口さん、好きな歌人は?

田: まず言いたいのはですね、毎日新聞の記事に「和泉式部が好き」と書かれたんですけど、あくまであれは平安期の歌人で、という括りの中での答えです。ちなみに藤原敏行も好きです。

五: ほう。

田: で、近現代の歌人だと……、永井陽子とか。韻律がきれいだと思うし、どことなく優しくて、でも寂しい感じがするのが良いと思います。あと、どこかあらぬところを向いている感じとか。自然体な感じなのも良いと思います。東直子さんも好きですね。やっぱり、どことなく寂しい感じがするからでしょうか。佐藤弓生さんの世界観にも惹かれますし、栗木京子さんや吉川宏志さんの技巧にもはっとさせられます。あと、大滝和子さんの開き直った感じとか、雪舟えまさんの飛躍がある感じとか……。何か他にもまだまだいると思うんですけど。もちろん、お二人の歌も大好きですよ。

堂: あ、どうも。ありがとうございます。

五: うれしいです。あ、ちょっとドリンクバーに飲み物取りに行くけど、田口さん何か要りますか?

田: いやいやいや、先輩にそんなことをして頂くわけにはいきません! 寧ろ私が行ってきますよ。何がいいですか?

五: いやいやいやいや。私が行くよ。

堂: この上下関係に敏感な感じが体育会系ですよね、田口さん。意外と。

田: 早稲田短歌会きっての、てか唯一の体育会系キャラです。

五: はあ、私は全く気にしませんよ。

堂: 僕は後輩にも常に敬語です。

五: それではこの辺で終わりますか。まだ早いことですし、中華街においしい小籠包でも食べに行きますか。

田: 食べたーい。

堂: 天和、地和、小籠包!!

五: それではお疲れさまでした。

堂: お疲れです。

田: お疲れです。

その他のカテゴリー

プロフィール

  • 五島諭 1981年生まれ。「pool」所属。「ガルマン歌会」運営。
    堂園昌彦 1983年生まれ。「コスモス」「pool」所属。「ガルマン歌会」運営。

アドレス

  • お気軽にお便りください。「ここの読みは違うんじゃないの?」とかも大歓迎です。

ランキング

リンク

  • Rhyme Light
    早稲田短歌会後輩のサイト。吉原幸子好き。
  • 冬陽の中の現代詩文庫
    堂園昌彦が一人でやっている現代詩鑑賞blog。 現代詩文庫を1番から順番に読む。
  • tankaful
    光森裕樹さんのサイト。 短歌ポータル。 道に迷ったらとりあえずここに行こう。
  • where can we go in the sand-fleet?
    島なおみさんのblog。 様々な歌人が短歌と批評をバトン式につないでいく、 「+ a crossing」が魅力。
無料ブログはココログ